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悩ましいお知らせが...MA1 DAC V2 Upgrade #1

2016年の8月にMeitner MA1 DACのメーカーアップグレードを実施しました。その際、輸入代理店に「USB入力はDSD128に対応したのかどうかどうか?」を問い合わせたところ、「メーカーに確認します」という返事以降、梨の礫状態。


Audirvana +2のDACバイスの情報表示を見るとDSD64のままだったので、DSD128に対応していないことは確認できましたが、結局、代理店からの回答は無いまま、1年半の月日が流れました。


そして本日突然、代理店よりアップグレードのお知らせメールが! その内容は次の通り。

  • 最新インタフェースプロセッサボード(EMM DA2ボード)交換
  • ファームウェアアップデート
  • 5.6MHz DSD、384kHz PCMに対応した最新MDAT3
  • USBオーディオへのガルバニック絶縁
  • 金額は\270,000(税別)


実は昨年のCES2017でEMM/DAC2XとMeitner/MA1のV2モデル、そして旧モデルのV2ユニットへのアップグレードが発表されました。V2バージョンの内容は以下の通り。

  1. MDAC™ in both platforms are now fully discrete DSD512/8xDSD D/A converters completely built in-house at EMM Labs' manufacturing facility in Canada
  2. Their multi-award winning MDAT2™ DSP has also been refined and updated to synergistically work with the new 8xDSD MDAC™. The new MDAT2™ DSP does real-time transient detection, processing and up-conversion of all incoming audio, PCM and DSD, before sending it to the new MDAC™
  3. The DSD audio signal path has been re-designed allowing for further enhancements in transparency during the DSD to Analog conversion process
  4. Proprietary hardware galvanic isolation for the USB Audio interface
  5. Supports sampling rates of 44.1, 48, 88.2, 96, 176.4 and 192kHz at word lengths up to 24 bits through all 6 digital inputs,
  6. Support for DSD128/2xDSD and DXD streaming via USB Audio
  7. Support for DSD (DoP) streaming via TOSLINK, SPDIF and AES
  8. No configuration necessary, just plug and play.
  9. Please note the V2 units performance are immediately noticeable and not subtle. So it’s quite a big jump in performance from the standard MA-1 and DAC2X to the V2 version.
  10. They are also offering an upgrade package for customers with older MA-1s and DAC2Xs to upgrade their units to V2. MSRP is: $1,750 US


重要なポイントだけ訳してみます。( )内は私の注釈です。

  • D/Aコンバーター回路のMDAC™がDSD512/8xDSD(つまり22.58MHz)に対応した。
  • MDAT2™ DSP(デジタル信号のアップコンバーター回路。オリジナルではDSD128=5.64MHzにアップサンプリングしていた)が8xDSD対応のMDAC™と相乗的に機能するよう改良されアップデートされた。(→これってMDAT2™ が従来の4倍の22.58MHzにアップサンプリングするということ?)
  • DSDオーディオの信号経路を再設計したことによりDSDからアナログへの変換プロセスにおける(音の)透明度がさらに上がった。
  • USBオーディオの入力インターフェイスにガルバニック絶縁を採用。
  • USBオーディオ経由で DSD128/2xDSD(5.64MHz)とDXD(PCM384kHz)のストリーミングに対応。
  • (USB入力以外に)TOSLINK, SPDIF, AES端子経由でのDSD [DoP] ストリーミングに対応。
  • V2ユニットの性能は直ぐに認識できるものであり、微妙な変化では無い。まさに性能面における大きな飛躍である。
  • 古いMA1とDAC2Xを使っている顧客のためにV2ユニットにアップグレードするためのパッケージが提供される。価格は$1,750。


代理店からのアップグレード通知と共通する(と思われる)部分もありますが、異なる(あるいは触れられていない)点もありますね。


■共通点(と思われるもの)


■異なる点

  • 代理店からの通知ではMDAT2ではなく、MDAT3になっている。
  • 代理店からの通知ではMDAT3が5.6MHz DSD、384kHz PCMに対応したとだけ書いてあり、DSD512/8xDSD対応(内部的に22.58MHzにアップサンプリング?)には触れられていない。代理店の通知はUSBオーディオの入力に限定した情報だとすれば理解できるが、ではDSD512/8xDSD対応の是非は?


■触れられていない点

  • DSDオーディオの信号経路を再設計
  • TOSLINK, SPDIF, AES端子経由でのDSD(DoP)ストリーミングに対応。

※ただし代理店からの通知ではインターフェイスプロセッサーボード交換とあるので、上記の2点が含まれているのかもしれない。


気になるのは異なっている2点です。


まずMDAT3という表記についてですが、CESでの発表は昨年の1月のことなので、もしかしたらその後MDAT2がMDAT3にバージョンアップしたのかもしれません。しかしながらネットで調べてもMDAT3というワードは引っかかってこないのです。


そこでMDAT2が発表された当時(2014年8月)のリリースを探してみたところ、次のような内容でした。


In MDAT2 we have built an improved new DSP engine with:
• Increased sonic detail from all digital audio streams (PCM and DSD) using new high-resolution algorithms.
• Time and frequency response filters that are greatly optimized
• A new signal processing engine that is built for very high-precision audio up-sampling (2xDSD up-conversion).
• A new more accurate 2xDSD up-sampling algorithm


2xDSD(=5.64MHz)アップサンプリング自体は、オリジナルのMDATと同じです。つまりMDAT2はアップサンプリング周波数の引き上げではなく、アルゴリズムの改良やフィルターの最適化だったことがわかります。


かたやCES2017の発表では“New MDAT2”と“New”の表記がされており、内容も8xDSDへのアップサンプリング対応だと思われるため、2014年のMDATからMDAT2への改良を上回る大幅な進化(DSPプログラムのアップグレード)と言えそうです。


故に、EMM/Meitnerの正式名称ではないものの、大きな進化をわかりやすく伝えるために代理店がNew MDAT2をMDAT3と(勝手に?)表記したか、もしくは近々MDAT3が発表されるかのどちらかでしょう。


次にMDAT3のDSD512/8xDSD対応(内部的に22.58MHzへアップサンプリング)についてですが、もしMDAT3がNew MDAT2と同じ、もしくはNew MDAT2のさらなる進化バージョンだとするなら、当然対応していることになります。旧モデルで使用しているDSPの性能に問題が無いとするならば、DSPのプログラムを書き換えることによってバージョンアップができるはずなので、代理店の言うMDAT3がDSD512/8xDSDアップサンプリングに対応していることはほぼ間違いないでしょう。


なおこのV2 upgrade packageを実施した海外ユーザーのコメントを調べてみたところ、ハード的な変更点は青い入力ボードのみということでした。つまりそれ以外はソフトウェア的なアップグレードということになります。


V2の内部写真を見つけたので、私のMA1 DACの内部写真と比較してみました。


■MA1 V2(upgrade)の内部写真


■我が家のMA1の内部写真


V2の写真の解像度が小さいためわかりにくいのですが、写真上方にある青いデジタル入力ボードのUSB周りのレイアウトが明らかに変わっています。一方、真ん中の赤いアナログボードと下方の青いデジタルボードに関しては、少なくともレイアウトの変更は見当たりませんでした。部品レベルでの変更が無いとは言えないけど、ハード的な変更は無いという蓋然性は高そうです。
※V2では下方のデジタルボードから左の電源部に黒いワイヤーが新たに繋がっている点が異なります。


このことは、代理店からの通知にある「最新インタフェースプロセッサボード(EMM DA2ボード)交換」という記述にも一致するので、恐らく代理店からのアップグレード通知は、V2 upgrade packageのことだと思われます。アップグレード価格も(カナダへの往復輸送費と代理店マージンを考慮すれば)概ね一致していますしね。


ただし、もしそうだとすると、V2 upgrade packageではMDAC(アナログボード)のハード的な変更は無いことになります。V2の特徴では一番最初に「MDACがDSD512/8xDSDに対応」と謳っているので、それがV2 upgrade packageに含まれないというのは考えにくいのですが、果たしてD/A回路(しかもディスクリート回路)のハード的な変更無くして対応できるものなのでしょうか? 


もしかしたら旧モデルに対してV2 upgrade packageを適用したとしても、V2の製品版と同じ性能にはならないのかもしれません。最悪の場合、MDACは従来のDSD128対応のまま(変更なし)となり、本来はDSD512に対応可能なMDAT3(New MDAT2)のアップサンプリングにもDSD128の制限がかかってしまい、結果として内部のアップサンプリング周波数は従来のまま変わらない、という事態もあり得るかも...。
(でもそうだとしたら"upgrade their units to V2"という言い方はしないと思うのですが...)


仮にその場合は、USB入力がDSD64からDSD128へ強化されることと、ガルバニック絶縁によるUSB入力の音質アップがアップグレードのメインということになります。MDATのプログラムの改善による音質アップは多少期待できるにせよ、内部でのアップサンプリングを従来の4倍の周波数で行うという本来のV2バージョンの音とは明らかに差があるでしょうね。
そして非常に不吉なことに、実はこの内容は代理店からの通知内容と非常に近いのです。


ちなみにiGalvanic3.0の導入によってMA1 DACのUSB入力に対するガルバニック絶縁は既に実施済みだし、(これまでDSD128は再生できなかったのだから当然だけど)DSDファイルもDSD64しか持っていないので、USBオーディオメインのアップグレードだと考えると費用対効果は非常に悪いです。唯一、MDATのプログラム改善による音質向上を期待するのみとなります。


一方、内部アップサンプリング周波数がDSD512に上がるのであれば、それなりに大きな音質向上が期待できるはず。当然、出費にも納得感が出てきます。


と言うわけなので、

  • お知らせいただいたアップグレードは、CES2017でアナウンスがあったV2 upgrade packageに相当するものかどうか。
  • 今回のアップグレードによって製品版のV2と同じ性能になるのかどうか(特に、内部のアップサンプリング周波数はどうなるのか)


の2点を代理店に確認しようと思いますが、例によって回答が来ないことも十分に考えられます。本来であれば回答内容によって発注するかどうかを決めるのが正しい選択だとは思うけど、その場合、回答が来ない時にどうするかという問題が生じます。回答が来ないのにもかかわらず結局のところ発注するのであれば、最初から発注すればいいじゃないかと...。


今後DAC自体を買い換えるのは多分無理だと思うので、(効果の程はどうあれ)せめてアップグレードくらいはしておきたいなというのが正直な気持ち。なので、「アップグレードの発注はするけど、不明点があるのでできれば確認してね」というくらいの感じで連絡しようと思います。