memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

MA1 DACとSonica DACの比較試聴

当初の予定ではゴールデンウィーク中にSonica DACをメインシステムに入れて試聴してみるつもりでしたが、何やかんやで実施には至らず。
何が何でもメインシステムに入れて聴いてみたいと言うわけでもなかったし、「まあ、いいか。」と放置してしまっていました。


それから約4ヶ月が経過した8月の最終日曜日。朝起きてコーヒーを淹れ、「今日は特にやることもないなぁ。何しようかなぁ...。」とリビングのソファーに座ってタバコを吸いながらボーッと考えていたところ、そう言えばSonica DACをメインシステムに入れて試してみるのをすっかり忘れてたことを思い出し、暇だからやってみることに。




6時間くらい通電した後、初めてメインシステムで聴いた印象は「MA1 DACとあまり差がない...かも。」という驚くべきものでした。
価格差は約10倍。果たして喜ぶべきか悲しむべきか、心中を複雑な思いが行き交います。


それから3週間にわたってSonica DACを使いました。音の印象は最後にまとめて書くので、まずは使い勝手に関して少し触れておきましょう。


1. デジタル入力が3系統しかないのはやっぱり不便
Bluetooth接続、ホームネットワーク接続、外部USBメモリというMA1 DACには無い入力ソースは使えるものの、有線デジタル入力端子は「SPDIF(RCA)、SPDIF(TOS)、USB(Type-B)」の3種/3系統しかありません。RCAにはOracleTOSにはDEQ2496の光出力、USBにはZ1ESをつないだので、OPPO105JPのデジタル出力(RCA)は入れることができないし、DEQ2496の(光ではなく)AES/EBU出力を利用することもできません。我が家の機器構成だと3系統のデジタル入力ではやっぱり足りませんね。
かたやMA1 DACは「AES/EBU(XLR)、SPDIF(RCA)×2系統、SPDIF(TOS)×2系統、USB(Type-B)」という4種/6系統あり、手持ちの機器は全てつなげられるわけで、デジタル入力スイッチャーとしての機能は明らかにMA1 DACの方が上回っています。アナログのAUX入力は無くて良いからデジタル入力(XLRかRCA)を増やしてくれるとSonica DACの使い勝手がさらに上がるのですが...(残念)。


2. Z1ESからのUSBデジタル出力を正しく受信してくれる!
以前の日記に書きましたが、Z1ESのUSB出力をMA1 DACに入れると、曲の頭の3秒前後が再生されず欠けてしまいます。(同じアルバムの曲を順番通りに再生する際は、最初の1曲目だけ頭切れするものの、それ以降の曲では頭切れは起きないみたい)
しかしながらSonica DACでは何の不具合も起こらずに正常に再生出来ました! しかもアプリからの曲操作に対する反応も速い! 普段はOracleではなくZ1ESをソースにすることの方が多いので、この点だけでもSonica DACをメインシステムに入れたままにしておきたくなりました...(^_^;


3. Bluetooth接続やホームネットワーク接続はメインシステムでは不要だけど、無いよりはあった方が便利
Sonica DACは普段はベッドサイドのヘッドフォンシステムで使用しており、その際にはネットワーク上のZ1ESをミュージックサーバーとして使っているので、ホームネットワーク接続機能は必須です(と言うか、ホームネットワーク機能がついていたから導入したというのが正しい)。またSonica DAC操作用のiPadAmazon Musicに接続し、BluetoothSonica DACにつなげれば、Amazon Musicのソース(眠れないときなど、波の音などの環境音を良く聞いている)も使えるので、Bluetooth接続機能も便利です。
しかしながらメインシステムではZ1ESとSonica DACはUSB接続できるのでホームネットワーク機能は必要ないし、Amazon Musicのソースを利用することもありません。ただし将来NASを設置する場合にはホームネットワーク接続できた方が(わざわざMacを使わなくてよいので)便利です。
結局のところ、機能に対する評価(需要性)は使い方次第で変わるわけですが、今のご時世を考えるとこれからのDACには少なくともホームネットワーク(DLAN/UPnP、OpenHome)に接続できるネットワークプレーヤー機能(と操作用アプリ)があった方が良いかもしれませんね。


4. リモコンの電池交換方法
8月下旬にSonica DACのリモコンが発売されたので直ぐに入手しました(質感は良いけどちょっと高い!)。

スマホタブレットのアプリ経由では「同軸、光、USB(Type-B)」の入力は切り替えられないので、Sonica DACを手元に置いて使うので無い限り、リモコンはあった方が便利です。
【追記】すみません。アプリにも入力切り替えメニューがありました。私が知らなかっただけでした。謹んで訂正させていただきます。
説明書が同梱されておらず、電池の取り替えかたがわからなかったので問い合わせてみたところ、底面の小さな穴にペーパークリップの先を入れて押し込んでやると電池トレイが少し出てくるとのことでした。
https://www.oppodigital.jp/files/2017/08/OPP-RC-SDAC_battery.pdf
早速やってみましたが、いくら押し込んでもトレイは出てきません。そこでPCのCDドライブ用のトレイ強制排出用ツールを持ってきて、(ツールの径よりも穴が少し小さかったので)強引に押し込んでみたのですが、それでもトレイは出てきません。おかしいなと思ってツールを穴から引き出したら一緒にトレイがくっついて出てきました。もしクリップの先で押してもトレイが出てこない場合は、クリップの先端を少し曲げてそこに引っかけるようにしてトレイを引き出してやるとうまく出てくるので試してみてください。




さて、最後に本題のSonica DACとMA1 DACの音を比較した感想を書き留めておきましょう。
なお個別に記載してない限り、感想はZ1ESとSonica DACをUSB接続した時のもので、DEQ2496は経由していませんがiPurifierは通しています。また電源ケーブルはヘッドフォンオーディオシステムで試した際にNBSとの相性が良かったため、Z1ESに使用しているBlack Label2をそのまま使用しました。PL-LやOracleとの接続ケーブルはMA1 DACの環境と同一です。インシュレーターはヘッドフォンオーディオシステムでの使用時に使っているKriptonを使用しました。


メインシステムにインストールして初めて聴いた時の感想は、先に触れたように「MA1 DACとあまり差が無いかも」というものでした。もう少し具体的に書くと、

  • 情報量や解像力についてはほぼ同等(差がわからない)
  • 低音〜高音の再生レンジの広さもほぼ同等
  • 低音はSonica DACの方が少し量感があるが、MA1 DACの方が深い低音まで出ている感じではある
  • サウンドステージはMA1 DACに比べると僅かに狭い


といった感じで、所謂スペック的な差は“意外にも”ほとんど感じませんでした。Oracleをソースにした場合もほぼ同様の印象です。流石に最新のES9038PROを使っているだけのことはあるわけで、「MA1 DACとあまり差が無いかも」と思ったのはそういう意味です。


では音の質感についてはどうかと言うと、

  • Sonica DACの方が音の出方が少し明快で、クッキリハッキリした感じ。MA1 DACの方が音の構成要素のつながりが滑らか
  • 音が薄いとは言わないけど、濃くはない。ちょっと表面的な表現になっているというか、一つ一つの音の厚み感とか深み感がやや弱い
  • 低音の質感はMA1 DACとの差を感じない
  • ピアノの音(特に高音)はMA1 DACの方がリアルさに勝る
  • ヴァイオリンのソロや女性ボーカルの情感表現は悪くないけどMA1 DACの方が若干上手
  • エレキギターの歪んだ音の表現が少しあっさりしている感じ


と言うことで、(私の好みからすれば)音の厚みとか深みという点がやや弱い印象を受けました。音自体はとてもキレイなんだけど、ちょっとだけ物足りないというか...。このあたりはデジタル処理部ではなくアナログ部の差なのかもしれません。
ちなみにOracleをソースにすると上記の印象はさらに強まります。Oracleの良さとSonica DACがうまくマッチしてない感じ。


ではこの質的な差が価格差に値するかと言われると、それこそその人の価値観次第だとは思いますが、まあ値しないでしょうね。もし今、DACを新規導入するとしてこの2台を比較試聴したとするなら、圧倒的な価格差を考えてSonica DACを選ぶか、あるいは100万円クラスの他のDACを試聴すると思います。


MA1 DACの発売は確か2012年なので、Sonica DACの発売まで5年という長い時間が経過しているわけです。その間のデジタル技術の進歩がこの価格差を生んだと言うことでしょう。


だとするなら「現時点での100万円クラスのDACってどんな凄い音がするんだろう」という興味がわくわけですが、もう買い変えられないので試すつもりはありません。きっと耳に毒でしょうから...(^_^)


3週間にわたるSonica DACのメインシステムでの試聴を終え、先週日曜日の朝、久々にMeitner MA1 DACに戻しました。3週間も通電していなかったので、音は少し籠もって透明感はないし、高音も詰まった感じで伸びがありません。MA1 DACは寝起きが悪いので仕方ないですね。


それから6時間ほどシステムエンハンサーをリピート再生してバーンインした後、試聴してみました。ベストの調子では無いけど9割方は戻ってきています。


Z1ESをソースにして2時間ほど聴いたのですが、MA1 DACSonica DACとの差は概ね先に触れた通りのもので、最大の違いはやはり“音の厚み”と“深み”、さらに言うなら“密度感”だと再確認した次第。


ただ、一つだけ新たな発見があったのは、音のダイナミックレンジがMA1 DACの方が大きいように感じたこと。音量が上がった際、明らかにMA1 DACの方が音に余裕があるように感じます。だからと言うわけでもないのですが、何と言うかSonica DACよりも格上の音に感じるんですよね。かつてChord DAC64とWadia521を比較試聴した際に感じたのと同じ感覚です。


大枚はたいて買ったMA1 DACに対する贔屓目が入っていることは否定はしないけど、それでもちょっとホッとした私でした。