memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

初めてのPCオーディオ

新しいDACとしてMA1を選んだ理由はいくつかありますが、そのうちの重要な一つが「DSD2.8MHz入力(USB)の音が良い」という評判です。当初はSACDプレーヤーの導入を考えていたにもかかわらず最終的にCDしか再生できないOracle CD2000mk3を選択した(SACD再生は諦めた)背景には、MA1によるDSD再生の音が良ければSACDに拘らなくても良いという考えがありました。


これからも我が家の中心メディアがCDであることに何ら変わりはありませんが、本当に音が良いのなら(まあ当然音は良いと思うけど、CDを凌駕するくらい音が良いのなら)PCオーディオによるファイル再生にも取り組んでみようかと。
大量にあるCDをリッピングして再生環境をPCオーディオに移行するつもりはさらさらないけど、SACDの代わりに高音質ファイルを購入するくらいならいいかな、と。


Oracleが加わった新たなシステムにも馴染んできたし、第3の矢であるスピーカーケーブルは月末まで届かないので、PCオーディオを試してみるには良いタイミングです。


【準備】
今回は高音質ファイル再生というのがどの程度のものなのかを試すことが目的なので、投資は最小限とすることにしました。高音質ファイル以外での投資は493円のUSBケーブルだけです。そもそもちゃんと再生できるのかどうかわからなかった(特にUSBケーブルの長さに不安が。2m近く引き回して大丈夫なのか?)ので、確認だけなら安いケーブルで十分だろうという判断ですが、仮にもオーディオ絡みでこんな安いケーブルを買ったのは初めてかも。


パソコン:MacBook ProRetina Display)15inch
DAC:MA1
プレーヤー:Audirvana Plus(試用版)
USBケーブル:amazon basic USB2.0(1.8m/TypeA-TypeB)


高音質ファイルはe-Onkyoで「Bill Evans/Waltz for Debby(flac 192kHz/24bit)」と「JOSEI ACOUSTIC PIANO TRIO/Blue in Green(DSF2.8MHz/1bit)」をダウンロードしました。Waltz for Debbyは高音質版のCDを持っているので比較することが可能です。


【設定】
Audirvana Plus(以後A+と略します)の設定に関してはネットに先人達の記録があるのでここでは書きませんが、今回の目的は飽くまで高音質ファイルの再生のみなのでiTuneとの連動機能はOffにしました。MBPR側については、不要なアプリはできるだけ落としたくらいで、特に特殊な設定はしていません。
MA1とMBPRをUSBケーブルで接続し、A+を立ち上げて環境設定でMA1を選択し、DoPの設定をして準備完了。


【試聴】
まずはWaltz for Debby(flac 192kHz/24bit)から。

  • 音の当たりが柔らかく、ボディの密度感が少し高いような...。
  • CDよりもシンバルの音の繊細さが多少増した感じ。
  • ダイナミックレンジが広いというか、頭を抑えられている感じがしないというか、音に伸びやかさがある。
  • 高音に薄いベールがかかっていて見通しが悪い。これはケーブルのエージングができていないからかも。


比較して聴いたCDよりは多少音が良い感じはするけど、この位の差だったら態々高いお金を払ってまでファイル再生に拘る必要は感じません。そもそもMA1はPCMファイルを内部で5.6MHzDSDフォーマットに変換しているので、PCMファイルだと差が現れにくいのかもしれません。


さて次はいよいよ本命のDSF2.8MHzの試聴です。ちなみにMA1でDSF2.8MHzを再生すると、正面下段にある176.4KHzと192KHzの2つのインジケーターランプが同時に点灯します。

  • flac 192kHz/24bitの再生で感じたダイナミックレンジの広さみたいなものが、より顕著に感じられます。この音と比較すると、CDってある一定の幅の中に詰め込まれたような圧迫感がありますね。
  • 録音が良いということもあると思いますが、楽器の音のリアリティ感、そして臨場感に優れています。
  • 音の当たりが柔らかく感じるのはflac 192kHz/24bitと同じ。これが高音質ファイルの特徴なのかな?
  • 高音の見通しの悪さも同様。やっぱり安物のケーブルだからか、それともエージングが進めば解消されるのか?
  • 低音のどこかにピーク?があるような変な癖(膨らみ)を感じる。そういえばWaltz for Debbyもそうだったような。


flac 192kHz/24bitと比較すると、DSF2.8MHzの方が明らかに音が良いです。この違いは誰が聴いてもわかるでしょう。でも本当にこれが実力の全てなのかな、という疑問はあります。ビックリするほど音が良い、というレベルではないし、何より高音の見通しの悪さが気になります。それが解消されると随分印象が変わるような...。本当にエージングの問題なのか、それともUSBケーブル自体の問題なのか...。


ここまでのトライアルでDSF2.8MHzの再生が問題なくできることが確認できたので、追加でファイルを購入。今度は弦楽器の音を確認するため、「Marianne Thorsen, TrondheimSolistene/MOZART Violin Concerto(DSF2.8MHz/1bit)」をダウンロードして試聴しましたが、音についての感想は先に聴いたBlue in Greenと同様です。良い音だとは思うけど、でもやっぱり何か引っ掛かりますね。


ここまでが土曜日のトライアルです。


この後、やっぱりUSBケーブルが気になって仕方が無いので、翌日配送可能なそこそこのUSBケーブルをネット探索し、最終的にヨドバシのネットショップでCardas Clear Serial Buss (USB/2.0m)を購入することに。wireworldのSilver Starlightとどちらにしようか迷ったけど、Cardas Clearって一度使ってみたかったんですよね。
これによりamazon謹製・激安USBケーブルは、我が家のシステムにおけるPCオーディオ再生可否の実証という実に立派な成果を残し、3時間ほどでその短い生涯を終えました。


で、翌日曜日の20時。待ちに待ったケーブルが届きました。amazonだったら午前中には届いていたと思いますが、翌日届いただけで良しとしましょう。



届くまでの間にCDを聴いていたのでシステムは本調子ですが、ケーブルは下ろしたてなので過度な期待はしないことにします。毎日使用すれば、次の3連休までにはそこそこエージングが進むでしょう。


まずはMozartから。


「何これ、全然違うじゃん!」


長年オーディオをやっていると、1カ所変えただけでビックリするほど音が変化するケースを何度か経験しています。今回の変化もまさに過去最大級といっていいもので、目の前に描き出される情景が一変しました。
最初に使ったのがamazon謹製なだけに性能差が大きかったのだと思いますが、オーディオとして取り組むならやっぱりちゃんとしたケーブルを使わないとダメですね。(でも音が出るかどうか分からない状態で何万円も出せませんから、システムチェック用にamazon謹製ケーブルを購入したのは間違っていなかったと思います。)


Mozartの後はBlue in Greenから何曲かつまんで聴きました。以下はDSF2.8MHz再生の感想です。

  • 情報量と解像力が半端ではない。うちのシステムからこんな音が出るのは初めて。
  • 透明感があり、サウンドステージの見通しが素晴らしく良い。
  • 音の拡がりは左右、前後はCD以上、上下はさほど変わらないか。
  • 楽器の定位も申し分なく、特に奥行き方向での精度が高いのが印象的。
  • 弦楽器の音が実に生々しい。
  • 音の色彩感が豊富。鮮度が高く、色鮮やかな音が展開する。
  • シンバルのブラッシングの音がとても繊細。小さな音の集合体として聞こえる。
  • 先に感じていた低音の違和感は完全に解消された。


例えるなら、テレビがSDからHDになって、場の空気感まで感じられるようになったのと同じくらいの変化ですね。基本的な情報量の違いはどんなに頑張っても超えられないことを痛感しました。


面白いのはUX-1で聴いていたSACDとは音の印象が異なること。微細な音の粒子の拡がりによって臨場感を醸し出していたSACDとは異なり、DSFのファイル再生では音の粒子感がほとんど感じられません。非常に滑らかな空気感です。それにどちらかといえば繊細で細身な印象だったSACDとは違い、DSFの方はしっかりとした筋肉のついた力強く締まった音です。


UX-1はDSDを一旦PCM化してマルチビットDACでD/A変換する方式ですが、それがPCMの呪縛を受けた状態でのSACD再生だったことがよくわかりました。やはりSACDは(一部の超弩級機種は別にすると)ΔΣ変換の方が(理論通り)相性がいいですね。


この音だったら、PCオーディオに嵌まる人が増えるのも頷けます。今の3倍くらいシステムにお金をかければCDでも近いところまで迫れるかもしれませんが、こんなにも手軽にこの音が手に入るのなら、そりゃあいっちゃう気持ちはわかるなぁ。


最後に、今回のトライアルによって分かったことをまとめておきましょう。

  • PCオーディオは想像していた以上に簡単。もしDACにUSB入力がついているのなら、ぜひ試してみることをお薦めします。
  • 品質(音)がイマイチなUSBケーブルは高音質ファイル再生の長所を消してしまいかねないので、ちゃんとしたケーブルを使いましょう。
  • 下ろしたてのUSBケーブルの音しか聴いていないので断言はできないけど、Cardas Clearの音ってもの凄く好みかも。Cardas Golden Referenceの音とはかなり違っていて、透明感があって色鮮やかで開放的で伸びやかな音がします。Clearという名称は伊達ではありませんでした。
  • どちらも音は良いけれど、192KHz/24bitの音とDSF2.8MHzの音の間には越えられない差があるような気がしました。これはPCMとDSFのフォーマットの差ですね。
  • MA1とWadia521の音についてはいずれ書くつもりでいますが、今日MA1でDSF2.8MHzの音を聴き、燻っていた後悔の念は綺麗さっぱり吹っ飛びました。MA1、恐るべし。CDの音だけではMA1の潜在能力は全く活かされていなかったことが分かりました。


今後の方針ですが、CD中心で行くことに変わりは無いものの、DSD2.8MHzのファイル再生にも取り組むことにしました。ダウンロードしたファイルが増えて再生頻度が高まってきたら、Mac miniで専用システムを組むかもしれませんが、当面はMBPRでいきます。MBPRのシステム設定とか、MBPRの設置方法とか、使用するUSBポートとか、セッティングを詰めてみることにしましょう。


でも、まずはその前に、Audirvana Plusのライセンスを購入しないとですね。