そもそもOracleを試聴しようと思ったのは、以前ヤフオクでお取引があったMさんから連絡をいただいたのがきっかけでした。私が夏に向けてCDP、DAC強化を目論んでいることをブログでご覧になり、その中にOracleが含まれていたので(Mさんは現在CD2500を使われています)、お役に立てればと情報提供を申し出てくれたのでした。
それから数回にわたってMさんがこれまで使ってきた本当に様々なDAC、CDTの情報をいただきました。そのやりとりをするうちに、当初の計画とは異なるOracleの導入を考えるようになったのです。SACDは聴けないけど、CDが素晴らしくなるのであればそれもまた一興かと。
さて本題に入りましょう。専用DCケーブルをインストールし、システムエンハンサーで4時間弱のバーンインを実施した後、いざ試聴を開始。
電源ケーブルにはAC LANDA改(プラグ/コネクタをP/C-037に交換)をあてがい、デジタルケーブルは付属してきたAcrolinkのケーブル(おそらく6N-D5050IIか6N-D5070II)を使用しました。
とりあえずの小手調べとしてARIAのサントラ/ピアノソロをかけてみたところ、確かに当たりは柔らかいものの、音像は大きいし、透明感も弱いし、全体的に平板なとても残念な音でした。何より残念なのは、心にグッと来るものが全く感じられないこと。
「まいったなぁ…」というのがこの時の正直な感想です。
比較のために同じ曲をUX-1でかけてみたところ、音像がキュッと締まって演奏が明瞭になり、響きの量も豊富で空間の感じも良く出ています。Oracle程ではないにせよ、それなりにしなやかさのある音だし、単純に比較するならUX-1の圧勝でしょう。
同じCDから別の曲を選んでさらに比較を続けましたが、感想は変わらず。UX-1は長年かけて追い込んできたので、それなりに良い音だと思います。でもOracleがこの程度の音だなんて全く予想外の結果でした。
でもこの結果にはどうにも納得がいきません。Oracleには外部クロックを入れられないのでその点は割り引くにせよ、こんなものではないはずです。もしこんな音だったらMさんが薦めるわけがありません。
そこで当初は後日実施しようと考えていたアクセサリーによるOracleチューンナップを前倒しで実施。これが意外な結果を生むことになります。
順を追っていきましょう。
1.D-Prop mini extendによる本体の3点支持(前1点、後2点)
少しフォーカス感が良くなりました。Mさんからの事前情報では「Oracleは足元が敏感」とのことでしたが、確かにそんな感じ。でもまだまだUX-1の音には及びません。
2.Valhallaデジタルの投入
使用していない(二軍の)アクセサリー達では役者不足のような気がするので、UX-1およびClock系に使用しているものも投入することにしました。その第1弾がValhallaデジタルです。
音がカラフルになり、倍音の存在感が増しました。情報量や解像力もやや高まった感じです。音が前に出てきて、サウンドステージが前後に拡がりました。低音の量感も少し増したかな。
最初の音に比べればかなり良くなってきていますが、まだUX-1の水準ではないですね。
3.電源ケーブルをNBS Blacl Label2に
当初使用していたAC LANDA改はどちらかというとクリーンな音なので、それが災いしていたのかもしれません。BL2に変更したとたん、いきなり空気感が変わりました。まさに激変というやつです。
空気感が濃くなり、サウンドステージの立体感が向上。チェロの一つ一つの音が立って彫が深くなり、楽器の実体感があきらかに増しました。
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ヴァイオリンの音の抑揚感が、滑らかでありながらダイナミックで、弱音が消え入る部分の音の粘りかたが心に響きます。UX-1だと僅かに硬質さがあるのですが、それが硬質ではなくて張力感漲るしなやかなヴァイオリンの音として耳に届きます。このCDがこんな風に聞こえるのは初めて。
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これもよく聴くCDですが、ボーカルが何とも言えず優しく、可愛らしく聞こえます。これも初めての経験です。
この時点では方向性は異なるものの、水準としてはUX-1と同等もしくは上回る音になりました。当初感じていた音像が大きいという不満点も、UX-1レベルには至らないものの随分小さくなってきています。バーンインを開始してから概ね6時間くらい経過しているので、もしかするとOracle内部のクロックがようやく安定してきたのかもしれません。
Oracleの潜在能力を顕在化するためのチューンナップはさらに続きます。
4.JS32を電源ユニットのインシュレーターに
ケーブルは固まったので、次は電源ユニットに着手。JS32を入れると音の分離感が良くなり、フォーカス感も向上します。しかしながらいきなり情緒性が低下して音がつまらなくなりました。これじゃだめだと撤去。電源ユニットについている脚は安物のゴム脚ですが、音はこちらの方が良いのです。どうやら金属スパイクは合わないようですね。
そして最後のトライアル。
5.Oracle本体のインシュレーターを、D-Prop mini extendからD-Prop extendに交換し、さらに外したminiを電源ユニットに移設
NBS BL2を投入した際に音が激変しましたが、この最後の梃子入れによってさらに大きく変化しました。
低音の量感が大きく増し、より深い低音に。UX-1では経験したこと無い低音です。また音の粒立ちがさらに良くなって音像が立体的になり、艶めかしく有機的に音に変化。
この変化は明らかにD-Propの特徴と言えるものですが、UX-1に使用した時よりも変化レベルは明らかに大きいと言えます。Mさんの情報通り、Oracleは足元に敏感です。
21時を過ぎたので初日の試聴はここまで。試聴開始時の音と最後の音では、とても同じ機器の音とは思えないくらい変わりました。手持ち最強のアクセサリー群の投入と、本体のバーンインが進んだお陰ですね。
返却するまでの間、さらにいろいろなジャンルのCDを聴いて確認作業を続けるつもりですが、とりあえず現時点での感想をまとめておきます。
- 情報量や解像力はUX-1と同水準か若干劣るくらい。
- サウンドステージはUX-1と同等もしくは若干広い。
- 音像はUX-1よりもやや大きい。
- 音のスケール感が大きく感じる。
- 抑揚表現がダイナミックで有機的。この音に比べるとUX-1は平板だと感じる。
- 倍音が綺麗に響き、音が消え入るところの表現が実に美しい。この弱音表現の美しさは大きな特徴だと思う。
- 滑らかで艶と煌めきがあって、総じて情緒性が強い音なんだけど、それが演出的ではなく自然に聞こえる。
- ピアノの音が過去にないくらいリアル。特に低音弦の質感が非常に良い。
- 密度感のある濃い音。
- 弾力感のある低音。緩い低音ではないが締まった低音でもない。
- 低音の量感と深さは過去に経験したことがないくらいだが、もしかしたらちょっと低音過剰かも。
こうしてまとめてみると、BL2、D-Prop、Valhallaの特徴がもろに出てますね。そのくらいアクセサリーには敏感な機器なのでしょう。
かつてUX-1とは異なるベクトルの音を手に入れようとTL3Nを導入しましたが、残念ながら思っていたような音にはなりませんでした。でも今Oracle CD2000mk2が、まさにその時に思い描いていた、いやそれ以上の音を奏でています。
導入するかどうかはまだ決めていませんが、気持ちは“導入”の方に一気に傾きました。最終結論は、週末に出す予定です。