memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

プラセボ効果を超えるもの

プラセボ(プラシーボ)効果はもともと薬学の用語ですが、オーディオアクセサリー類による音の変化(改善)に関して引き合いに出されることがあります。簡単に言うと、「効果がある(音が変化する)」という思い込みによって、あたかも実際に音が変化したように感じる、ということですね。
一方、薬学の世界ではプラセボ効果の逆パターンであるノセボ効果というものもあり、それをオーディオに敷衍するならば、「効果がない(音が変わるわけがない)」という思い込みによって、実際には変化しているのだけれどその変化を感じない(知覚しない)、ということになります。


私自身は「オーディオアクセサリーによって音は変化する」、より正しく言い換えると「音が変化するオーディオアクセサリーは存在する」と思っています。しかしながらプラセボ効果もノセボ効果も同様に存在しており、オーディオアクセサリーによる音の変化が微妙なレベルにとどまる場合、しかもその変化の方向性が当該アクセサリーに対して事前に抱いていた方向性に合致していた場合、その多くはプラセボ効果かもしれないと思います。


では変化の方向性が当該アクセサリーに対して事前に抱いていた方向性とは異なっていた場合、それはプラセボ効果と言えるのでしょうか?
あるいは変化の方向性が当該アクセサリーに対して事前に抱いていた方向性と合致しているけれども、その変化量が想像以上に大きかった場合はどうなのでしょう?


個人的には、そのどちらとも実際に効果があったと考えて良いのではないかと思います。
つまりプラセボ効果は、事前に想定していた変化の方向性と変化量の範囲内でしか起きえないわけで、変化の方向性が異なっている時点で、あるいは変化量が想定以上であった時点で、その変化は“真物”であると考えて良いと思っています。


先日までレビューしていたQR(クォーツレゾネーター)について当てはめて考えると、Antelope OCXのインシュレーターとしての使用についてはその変化量が想定以上だった点において“真物の効果”であり、それ以外についてはプラセボ効果という疑いをぬぐいきれないということになります。まあトランス軸とインレットについては効果があったと思っていますが、いずれも効果の方向性は想定通りだったし、変化量も想定範囲を超えるものではありませんでしたからね。


何故こんなことをウダウダと書いたのかというと、前回の日記で触れたD-PROP Extendが届いたので早速SS-010に使ってみたところ、想定外の、まさにビックリするような大きな変化があり、「これはプラセボ効果なんかではないな」という考えがふと頭をよぎったので、あらためてプラセボ効果というものについて少し考えてみたという次第。まあどうでもよい話ではあります。



で、ここからが本題になるわけですが、D-PROP Extendは現在PL-Lに使用しているし、ミニタイプの方は今は無き170iTransportで使用していた(現在はTL3Nに使用中)ので、効果の方向性と変化量については経験値があります。楽器(音)の分離が良くなってサウンドステージが明快になり、響きの量も増え(でもC-PROPのように変な響きは乗らない)、そして一番の特徴は音の表情が豊かになること。音楽性が増すと言ってしまうと語弊がありますが、例えばヴァイオリンだとウェット感やヌメッとした肌触りみたいなものが加わって、音が“生々しく”なります。


その変化を良しとするかどうかはかなり好みが分かれるところだと思いますが、個人的には好きな方向性だし、QRをPowerbank8のインシュレーター代わりに使ったことによって生じた「音がまじめになってしまって、CDによっては楽しめないものが出てきた」という問題点を解消するには良い対策なのでは無いかと考えたわけです。


ところが実際に使ってみたところ、これがとんでもないくらいの変化(効果と言い切れないところがちょっと複雑な気持ち)がありました。これまでこのブログの中ではほとんど使った記憶が無い修飾ワードだと思いますが、一言で言うなら


「音がエロエロになってしまった」


のです。


(つづく)