memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

カメラシステムのリコンストラクション #1

オーディオがすっかり落ち着いてしまったので、ただ今の興味は完全にカメラにシフト。
で、思うところあって、これまでのカメラシステムを根本的に見直すことにしました。具体的には、AF&ズームレンズという“お気軽撮影システム”から、MF&単焦点レンズという“原点”に立ち戻ろうという試みです。


そのトリガーになった出来事が2つあるのですが、今日はその話を。


時は若干遡りますが、Nikon1を購入した直後、実は50mmの単焦点MFレンズ(Cosina Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZF.2)を入手しました。何故突然レンズを購入したのかは年明けにでも書く機会があると思いますが、久しぶりにMFで撮影してみると、20代の頃、Nikon F301(詳細は省きますが今思えばかなり変てこなカメラでした。興味のあるかたはググってみて下さい)を持って走り回っていた頃の記憶が甦ってきました。


ちょっと話は脱線しますが、F301が発売されたのは折しもAF(オートフォーカス)を搭載したミノルタα-7000が発売された年で(市販一眼レフでのAF搭載は1981年のリコーXR6が最初のようですが、爆発的にヒットしたのは85年のα-7000)、それを境に時代はAFへと向かいます。
実はF301のAF版であるF501という機種が半年後に発売されるのですが(AFのニーズがどの程度あるのかわからなかったため、F301とF501は同時に開発されていたそうです。片方はMF機、もう片方はAF機で、乱暴に言えばF501からAFメカを取り外した物がF301らしい)、私はF501が発売される前にF301を買ってしまっていたので、F501の発売を知って愕然としたものです。今だったら速攻で買い替えている可能性もありますが、当時はお金もなかったので買い替えなんて考えもしませんでした。(笑)


そんなわけで「AFいいなぁ」と思いつつも、初めて自分のお金で買ったカメラであるF301を携え、愛車を駆ってMFで撮りまくっていたわけです。(といってもよく撮る月でフィルム2本くらいだったと思います。デジカメと違ってランニングコストが高いですから。ちなみにデジカメのよい点として失敗を気にせず撮りまくれることとその場で撮影画像を確認できるところがありますが、反面、1枚を撮る際の緊張感、そしてカメラ屋からプリントがあがってくる時の何とも言えないワクワク感が無くなってしまったので、その点は寂しい限りですね。とは言え、今さらフィルムに戻ろうとは思いませんが。)


若い頃に身体に憶えさせたことって歳を重ねてもおいそれとは忘れないわけで、当時のMFの撮影感覚というやつを、久々に思い出しました。
AFで撮ってもMFで撮っても、本来は写真そのものの出来には関係ないはずです。構図が同じで、絞り値等々が同じであれば、基本的には同じ写真になります。でもAFとMFでは、撮影する際の感覚が違うんですよね。フォーカスリングを合わせてシャッターを切るまでの一連のプロセスが、“撮影した”という気分(=充実感)をより強く感じさせるのです。


余談ですが(何か余談ばかりですが...)よくできたMFレンズを使うと、コンパクトデジカメのへっぽこAFよりはよほど速く合焦できたりします(笑)。ちなみにNikon1のハイブリッドAFの激速さにはビックリしました!これには逆立ちしても勝てないです。一方、X100のAFは(明るさや対象物のコントラスト等の条件にもよりますが)総じて遅いです。特に近距離はダメダメ。X100はMFも可能ですが、これがまた輪をかけて使いにくいしろものなので、X100は屋外のスナップ以外にはあまり使う気になりません。まあOVFという機能からしてストリートフォトの方が合っているように思いますが、画質が良いだけに何か勿体ない...。


話を戻して、もう一つMF撮影とAF撮影の違いについて触れておきます。ご存じのように昨今のAFは優れていて、ファインダー内のフォーカスエリア(ピントを合わせる場所)をカーソルで移動させることができます。この機能、三脚での固定撮影の時にはよく使いますが、手持ちの時にはそんなしちめんどくさいことはせず、フォーカスエリアは中央に固定しています。
従って、例えば想定構図の左側にある対象物にピントを合わせたい時は、一旦その対象物をファインダー中央に持ってきてAFボタンで合焦させ、それから撮りたい構図に戻すわけです。結果としてファインダー内の画像は“行って戻って”と変化します。もしピント位置を少し変えたい場合は、再び行って戻ってを繰り返すことになります。(AFとMFを同時に使えるレンズの場合はフォーカスリングで調整することも可能ですが、手持ちの場合はAFで合わせ直しています。)


一方MFの場合は最初から想定構図を決め、その状態のままでフォーカスリングを回して左側の対象物にピントを合わせるので、ファインダー内の画像は大きく変化しません。ピント位置を調整したい場合もフォーカスリングを回して調整するだけです。つまり、常にファインダー画像=構図という状態が保たれているわけで、そこのところがAF撮影とは大きく異なります。
上手な方だとどちらでもあまり関係がないのかもしれませんが、私にとっては「想定した構図をじっと見続けていられること=構図の隅々まで気配りできる=結果としてよい写真が撮れる」ような気がしてなりません。


実はF301からF4(無論AF機)に買い替えた際、機材の性能自体は格段に高まっているにもかかわらず、写真がヘタになった〜想定したような写真になっていない〜ように感じたことがあります。その時は「カメラ自体の癖が違うから」と自己納得させたのですが、結局F4を手なずけたとは一度も思えませんでした。身の程に合っていなかった(スキルが低かった)と言えばそれまでですが、今思えば実はMFからAFに変えた(AFメインで撮影した)ことが意外に大きかったような気がするんですよね。


これまた余談ですが、F4はFシリーズ初のAF搭載機ですが、実はMF機としての操作性は後のF5以上だったそうです。そんなこと知らなかったし、そもそもAFに憧れて購入したという要因も大きかったので、F4をMFで使うなんて考えもしませんでした。AFに拘ってしまったのがF4を使いこなせなかった最大の原因だったのかもしれません。


話が長くなり、あちこち跳んでいるので何が何だかわからなくなりそうですが、要するにトリガーの1つ目はZeiss Planar T* 1.4/50mmを購入したことでした。それが切っ掛けとなって、AFからMFに戻そうかなと思い始め、どうせならズームメインではなく単焦点メインの方が潔いか、と“原点回帰”を思い立ったというわけです。



もう一つZeiss Planarについて触れないわけにはいかないのが、その“モノ”としての質感の高さと操作感の良さ。金属とガラスの塊のようなズッシリとした手応え、ヌメッとしたトルク感のあるフォーカスリング。触っていると「これこそ本物だ」と思えてくるわけです。開放付近のピント合わせには相当手こずりますが、ピントの決まった時の画像は実に素晴らしい!解像感とボケのスムーズさは“流石Zeiss”と思わざるを得ません。
となると他にも揃えたくなるのが人情というものなのです。すなわちレンズシステムの入れ替えというわけですね。


ここで2つ目のトリガーとなったのが前回の日記。
「残る問題は、GR DigitalIII、Nikon1、X100の使い分けをどうするかということですが、これが一番悩ましいかも...」と書いたところ、友人から「どれか1台,引き取ってあげましょうか?」というコメントをもらいました。

「悩ましいのが楽しいんだよん!」と返したのですが、「冷静に考えると3台(D300フィルムカメラもいれると計6台)もいらんわなぁ。使っていないレンズもあるし、少し整理した方がよいかも...」と思ったわけです。大した金額にはならないと思いますが、Zeiss買い増しの足しにはなるでしょう。


これが決定打となって、気持ちはカメラシステムの再構築に大きく傾きました。

カメラはデジタル一眼レフと、X100、Nikon1だけにして、レンズは単焦点中心に組み直します。フィルム用システムはレンズ1本だけ残して全て手放すことにします。ここまでは既に気持ちが固まりました。


しかしながらあと一つ悩ましい問題が残っています。それはデジタル一眼レフをどうするかということ。
今使用しているのはD300ですが、撮像素子がAPS-Cサイズなんですよね。従って、例えばZeiss Planarの50mmをつけると、実際にはその1.5倍となる75mmレンズ相当の画角になります。APS-Cサイズの場合は35mmフルサイズ(フィルムのサイズ)よりも撮像素子が小さいため、結果的にレンズの全体を使わずに中央部分だけを使っていることになり、その結果、フルサイズの撮像素子を持つカメラにつけて撮影した時とは画角(撮影範囲)が異なってしまうわけです。
多くのレンズの場合は周辺部よりも中央部分の性能の方が良いので、おいしいところだけを使用できるという見方もできますが、周辺部の性能も含めてそのレンズの個性(味)なのだから、APS-Cではそのレンズが持つ全てを味わうことにはならない、とも言えます。


要するに、APS-Cのカメラでは折角のZeissレンズを愉しみ尽くせないではないか、というわけです。
また焦点距離が1.5倍違うとなると、揃えるべきレンズの構成も当然変わってきます。Zeissだと頑張って3本(うんと頑張って4本)だと思っているので、フルサイズベースで考えるか、APS-Cベースで考えるかはシステムの根本に関わる大きな問題です。


もしフルサイズベースで考えるとしたら、現時点での候補はNikon D700以外にはないのですが、この8日に“改正電気用品安全法の対応により、Nikonが「D700」「D300S」の国内出荷を終了”とのリリースがありました。ネットを見る限りまだ在庫を持っている店はあるようですが、いつまであるかは極めて不透明。中古もあまり出ていないようです。


本来であれば10月下旬にD700の後継機と思われるD800の発表が予定されていたようなのですが、タイの洪水の影響で無期延期となった模様。それに加えてD700の国内出荷終了なので、もしD700を買うなら一刻も早い方がよいわけです。

D800は36Mに画素数が上がって、100%視野率のファインダーとなり、動画性能が向上との噂がありますが、視野率100%のファインダーには惹かれるものの、画素数アップよりは高感度性能が上がった方が嬉しいし、動画性能はどうでもよい機能です。


故にいつになるかわからない(しかも当初は値引きがほとんど無い)D800を待つよりは、(価格もこなれてきてまだ在庫はかろうじてある)D700の方が良いのではないかと思うのですが、一方でD800以外に廉価版のフルサイズ機が出るという噂もあり、もし高感度性能がD700以上だったら後悔するかも(F501が出た時の苦い思い出が脳裏に浮かんだり)...とか思ったりして、その辺りが悩ましいところ。


仮にD700を購入した場合でも、当面D300は手元に置いておこうと思います。D700よりは軽いし、レンズが揃っていない中、焦点距離1.5倍が奏功する場面もあり得るし、どうせボディだけ下取りに出しても大した金額にはならないので、だったら置いておこうかなと。


D700については悩んでいる時間は無さそうなので、どうするかは今週末に決断するつもりです。合わせて、手放すことに決めた諸々の機材をマップカメラに持って行く予定ですが、マップカメラにはD700の在庫がないようなので、これまた悩ましいところですね(下取りの場合は買い取り査定額の10%UPなんですよね)...(^_^;)


(つづく)