memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

NAGRA PL-L サウンドレビュー#4


GECのA2900が届いたことは先日の日記に書きましたが、今回はA2900の音について。


12AX7をTESLA E83CCに交換した時は初期バーンインが終わった直後から本領発揮という感じの音を奏でてくれましたが、今回のA2900(12AT7)への交換では途中何度も「元に戻そうか…」と思ってしまいました。兎に角、最初の音は悶絶するくらい酷かったです(^_^;

レンジが狭く中域〜中高域が張りだしている所謂かまぼこ形のバランスなのにサ行の歯擦音だけがえらく耳につく、というとんでもない音でした。そもそも新品おろしたての音に期待する方がおかしいわけですが、TESLAの経験があっただけについ期待しちゃったんですよね。A2900に交換する前に使っていたマラードの音が良かっただけに、それとのギャップが大きかったというのもあったと思います。
流石にこれがA2900本来の音であるわけがないので、パワーアンプのスイッチを切ってひたすらA2900のバーンインを進めることにしました。これが大体20時間時点の音の感想です。


40時間が経過し、再度試聴。
前回よりは随分とまともな音になっています。低域も出始めたし、高域の伸びも出てきました。サ行の歯擦音はまだ気にはなるものの、前回に比べるとかなり聞きやすくなってきています。しかしながら中域の強さは相変わらずです。周波数バランスの問題もあるけど、勢いがあるんですよね。この時点で「もしかしてこの中域がA2900の個性なのかも...」と思い始めました。
少なくとも“聞くに堪えない”という段階は脱したので、2時間ほどCDを聞いてみることに。CDによってかなりバラツキはありましたが、感想を敢えて一言でまとめるなら、


「この音、つまらない...。」


ある意味マラードとは正反対です。細かな欠点には目を瞑るとしても、(私にとっては)何よりも肝心な“情緒性”が非常に弱いのです。音を聴いていても心がほとんど動かないのです。(“ほとんど”という言葉を使ったのは、極まれに“あれっ”と思うような音が出たりするから。)
ノリで聴かせるRockなどはまだ良いのですが、クラシックと女性ボーカルは全然ダメ。心に響くものがほとんどありません。
ここまで書いて思い出しました。PL-Lを最初に聴いた時の音(3本とも純正のエレハモ)がやっぱり“素っ気なく”って“情緒性”が弱かったんですよね。だから直ぐにTESLAに変えてしまったのですが、それでもA2900のおろしたての音よりは随分まともでした...(^_^;


でも客観的に評価するなら、実はこの時点での音は必ずしも悪い音ではないと思っています。ヘタなショップの音よりはまともな音でしょう。この音に心を動かされる人がいても決して不思議ではありません。それは多分私と求めるものが違うので、評価が異なるのだと思います。でもこのシステムは私のためのシステムですから、ダメなものはダメなわけです。


この段階でマラードに戻そうかと真剣に悩みました。
さらには「A2900はトリプルマイカのスクエアゲッタータイプじゃないとダメなんじゃないか」とも考えました。実はネットを探したらUKのe-bayに出品されているのを見つけたのですぐにアカウントを作り、入札寸前で思いとどまったりもしています。


それらを思いとどまらせたのは、結局“12AT7の極めつけ”といわれる評判の良さなんですよね。いくら好みの差があるからといっても、この音で“極めつけ”と呼ばれるはずがない(そこまでクオリティの高い音ではない)と思い直したのです。きっと大器晩成型なんだろうと。


“急いては事をし損じる”


今はA2900を信じ、どんな音が鳴っても100時間のバーンインが終わるまでは我慢してそれから判断しよう、と心に決めました。


(A2900篇はさらにつづきます)