memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

零崎軋識の人間ノック(西尾維新)

零崎軋識の人間ノック (講談社ノベルス)

零崎軋識の人間ノック (講談社ノベルス)

零崎一賊」―それは“殺し名”の第三位に列せられる殺人鬼の一族。二つの通り名を持ち、釘バット“愚神礼賛”ことシームレスバイアスの使い手、零崎軋識。次から次へと現れる“殺し名”の精鋭たち。そしてその死闘の行く末にあるものは一体!?新青春エンタの最前線がここにある。 〜「BOOK」データベースより


戯言シリーズ”のスピンオフ、「零崎双識の人間試験」に続く零崎シリーズ(?)第2弾です。
大多数が戯言シリーズの登場人物ではありますが、戯言シリーズで見せた側面とはまた別の側面(というか本質的側面?)を見せてくれている点がとても興味深いですね。この作品を読むとまるで別の登場人物かと思ってしまいます。でも戯言シリーズとのリンケージも配されているので、何人かの登場人物についてはキャラクターの表面的な変化の理由を推察することができます。
作品単体としてはとても面白いと思うのですが、それでも本家・戯言シリーズに比べると若干面白さの量は控えめであり、また方向性も異なります。全体的にちょっと緊張感がありますね。まあ今回は「闘い」が多いので致し方ないとは思いますが、登場人物たちがいずれも若い(血気盛んな)こと、そして、あの「戯言遣い」が登場しないということ、が作品全体に対して影響を与えているような気もします。もう少し「通奏低音的ほんわかさ」があっても良いかなと思いました。
まあご託はその程度にしておきましょう。スピンオフとは言え、久しぶりに読んだ戯言系はやっぱり面白いです。「新本格魔法少女りすか」も「化物語」も無論面白いのですが、やはり西尾維新さんの原点と言える作品だけに(本家には若干劣るにせよ)面白さのレベルが違いますね。
本作の主人公(主軸)は零崎軋識ということになるのでしょうが、軋識よりもその他の登場人物の方が存在感があります。一番驚いたのが赤神イリアのメイド、千賀てる子さんです。あかりさんやひかりさんと違うということはわかっていたのですが、まさか拳士だとは思いませんでした。竹さんの仮面メイド・てる子さんのイラスト...素敵です!
また萩原子萩ちゃんと、暴君こと玖渚友ちゃん(死線の蒼と言った方がよいかな)は随分とハードキャラだったんですね。戯言シリーズでは(間接的には言及していたものの)そんな感じはあまりしなかったので少しビックリしました。
それとやはり語らずにはいられないのが、死色の真紅こと哀川潤さんです。若いです。強いです。でも...無茶苦茶ですぅ!こんな出鱈目な強さはファンタジーでもSFでも成立しません!それが何故かすんなりと受け入れられてしまうのが西尾マジックなのでしょうか。
登場人物についてあと一言だけ。極めて個人的願望としては紫木一姫ちゃんが好きなのでぜひとも登場して欲しかったのですが、その点はとても残念。次作「零崎曲識の人間人間」ではちゃんと登場するかなぁ...。
いずれにせよ本家・戯言シリーズが終わってしまった今、スピンオフ作品は「あの頃を何時までも」的想いを抱かせる作品だけに、零崎シリーズ以外にもどんどん書いていただきたいものだと思います。