memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

真空管ころがし

先日からマンションの大規模改修工事が始まりました。工事計画書を見ると7月完了予定で、ベランダに出られなくなる期間もかなりあるようですが、幸いにしてゴールでウィークの間は大丈夫そうなので、当初の予定通りにDACをWadia521に戻してみることにしましょう。ベランダに出て作業するついでに年に1回の端子クリーニングを、あとは時間に余裕がある(はずな)のでスピーカーセッティングの調整もやるつもり。もし期末業績賞与が出たら電源ケーブルをもう一本作ろうかなとか、ゴールデンウィーク中はオーディオ的楽しみがいろいろ待ってます。


それはとても嬉しいことなのですが、それまでの間はすることがないなぁ...と。手持ちぶさたというか、刺激がないのが寂しいというか、心が落ち着きません。こんな時に重宝するのが真空管ころがし。アクセサリー以上に音が変わるので充実感も大ですが、手持ちの球の組み合わせは全て試しているので新鮮味はありません。まあそれでも自作電源ケーブル導入とそれに伴うアロケーション変更によりとても良い感じになっている今のシステムで、真空管を交換すると一体どういう音が出るのかという興味は大きいです。


思いついたが吉日と、早速交換してみました。ターゲットは終段の12AT7で、A2900(今使っているのは2マイカバージョン。3マイカバージョンを使うのは勿体ないので...)からTelefunken ECC801Sへの交換。この2本の間での交換は何回かやっているので、音の変化の傾向は予想できますが、興味があるのはその変化の程度です。システムの状態が良いだけに、変化も大きいのではないかなと期待している次第。


初日は少し寝ぼけた感じの音でパッとしませんでしたが、2日目、3日目と段々良くなってきました。基本的にTeslaE83CCとTelefunkenの組み合わせは高S/N比で高解像力の所謂Hi-Fi系の音ですが、情感溢れるA2900に比べると音楽性にやや劣るところが欠点。今回もこの傾向は概ねそのままなのですが、以前に比べると素っ気なさをあまり感じないのが不思議なところ。むしろTelefunkenの特徴がポジティブに作用して、ディティール表現、音の分離感、そして鮮度感が向上し、結果、A2900とは別の角度での音楽の楽しさが感じられるように思います。やっぱり電源ケーブルアロケーションを変えたことが良い方向に作用しているのかな。


音像が若干左寄りになるため(多分双極バランスがとれていない)PL-Lのバランスで少し右寄りに調整した結果、サウンドステージの拡がり方がさらに良くなりました。多分、空間情報の量はTelefunkenの方が多く、結果として空間の拡がり(特に奥行き感)が良く感じられます。ピアノの音の透明感、ヴァイオリンの倍音の分離感、そして楽器の音像の小ささに関しても、Telefunkenの方が優れてますね。


一方、Telefunkenも低音の量感はそれなりに出るのですが、沈み方、彫りの深さ、ゴリッとした感じはやっぱりA2900の方が一枚上手。ボーカルの存在感の強さ、艶っぽさやウェット感の表現力もA2900に軍配が上がります。


両者の特徴を全て備えている球があれば理想的なのかもしれませんが、この2つのベクトルは(真空管の構造的観点〜11mmショートプレート/フレームグリッドのECC801S、17mmロングプレートのA2900〜から考えても)相反するものだと思うんですよね。


二兎を追うものは一兎も得ず。この2つの球が奏でるそれぞれの良さを素直に楽しむのが一番です。