memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

CDオーディオ vs. PCオーディオ

DSDファイルは、PCMハイレゾファイルやCDと比較して、明らかにフォーマットの優位性が感じられる音がします。前にも書きましたが、SD動画とHD動画くらいのスペック差を感じるし、生々しくて魅力的な音だと思います。またCDとPCMハイレゾファイルをスペック的に比較すれば、当然ハイレゾファイルの方が優位であることは自明の理です。


では「CDオーディオとPCオーディオを比べることに何の意味があるのか」ということになるわけですが、オーディオ的面白さ(知的好奇心)を別にするならば、私にとっては「どちらの方が音楽を楽しく聴くことができるか」という命題に帰結します。


これは何も今回が初めてのことではなく、過去に通過してきた「CD vs. SACD」がまさに同じ構図でした。その時のSACDはUX-1のアナログ出力(DSDをPCMに変換してマルチビットDACでD/A変換)であり、かたやCDはUX-1のデジタル出力をWadia521(マルチビットDAC)でD/A変換したもので、結果的にはこの再生システムの(音の)違いがフォーマットの差を覆しました。SACDは確かに情報量が多くて音も繊細で空間描写も良いけれど、でも音の線が細くて力強さに欠けました。一方のCDは音の骨格がしっかりしていて勢いがあり、音楽のノリの部分の表現が上手でした。結局、我が家の再生システムでは「フォーマットとしてのSACDの良さは認めるけど、CDの音の方が聴いていて楽しい」という結論になったわけです。


今回の「CDオーディオ vs. PCオーディオ」にも同じ事が言えるわけで、DAC(MA1)以降は共通故に、恐らくは「CDトランスポート vs. PCトランスポート」というシステムの違いが重要なポイントとなります。またMA1は全ての入力データを須くDSD5.6MHzに変換しているという点も重要です。そして何より重要なのは、「規格上のスペックが高い」ことと「聴いていて楽しい」ことは別物である点。言い換えるなら、聴いていて楽しいかどうかは多分にシステムの影響を受けるということです。これはかつて行った「CD vs. SACD」の比較結果からも明らかなのですが、飽くまで“我が家のシステムにおける固有の結果”であることは強調しておきましょう。


さて、比較する際の最も簡単な手段は同じアルバムを比較することで、「CD vs. SACD」の時はハイブリッド版SACDで簡単に実現できました。しかしながら今回は、PCMハイレゾファイルとCDの両方が揃っているものは「Waltz for Debby(24bit/96KHzPCM)」のみ(というか、PCMハイレゾファイルはこれ一つしか購入していない)。故に「Waltz for Debby」の比較感想は重視するにしても、それだけで決めるというのはあまりに危険です。だからと言って比較のために既にCDを持っているアルバムのハイレゾファイルを買うというのは流石に勿体ない。ハイレゾファイルって高いですからね。


そこで考えたのが、1週間にわたってPCオーディオの音(DSDファイル再生の音)だけを聴くことで一旦耳をPCオーディオ基準にし、その状態でCD2000mk3の音(CDオーディオの音)を聴いたときにどう感じるかによって判断するというやり方。比較対象がPCMハイレゾファイルではなくDSDファイルになりますが(ハードルが上がることになりますが)、それでもCDが楽しく聴けるとするならば、CDメインで十分なのではないかということです。逆にCDのネガティブな点が気になって楽しく聴けないという結果になれば、軸足をPCオーディオに移すことを検討します。


というわけで1週間ぶりにCD2000mk3のダストカバーを外し、CDを聴くことに。ポイントは2つ。一つはCDの音に再び耳が慣れてしまうまでの間、さらに言うなら聴き始めの第一印象が重要だということ。もう一つは様々なCDを聴いてみて、総合的にどう感じるかです。最初にどのCDを聴くかについては悩みましたが、やはりヴァイオリンは外せないし、楽器の分離感や定位も確認したいので、カルミニョーラの「四季」にしました。CD2000mk3にCDをセットし、いざ試聴です。


冒頭5秒ほど聴いた時点で思ったこと......「あれっ、CDってこんなに音良かったっけ?」
第一楽章を聴き終わった時点の感想......「CDでも全然OKじゃん!」


DSDファイルを1週間毎日再生してきたことにより、CDの音に対して知らず知らずのうちに過度にネガティブな印象を持ってしまっていたのかもしれません。その印象を基準にした感想が「あれっ、CDってこんなに音良かったっけ?」なんだろうと思います。
スペック的に分析するならDSD優位は揺らがないのですが、CDの音が魅力的で無いかというと全くそんなことはなく、DSDとは音の鳴り方が違うという点は個性ともいえるし、情報量にしても特に不満は感じません。ヴァイオリンの音のしなやかさや艶っぽさなんかは十分に魅力的。


その後、CDを取っ替え引っ替えして3時間ほど聞きましたが、CDの方が音に芯があってある種のまとまりを感じるし、弾力感と量感のある低音はDSDよりも好ましいと感じることもしばしば。やや物足りなく感じたのは解像力と音の緻密さ、空間情報の描写で、これは逆立ちしてもDSDには勝てない感じですね。


最後に「Waltz for Debby」でPCMハイレゾファイルとCDを直接比較しましたが、PCMハイレゾファイルの方が音が伸びやかで繊細な感じを受けるものの、大きな差は感じませんでした。むしろ聞こえ方が少し違うので、使っているマスターが違うのではないかということの方が気になったくらい。またどちらの方が楽しく聴けるかについては、どちらも同じように楽しく聴くことができました。


結局思ったのは「CDにはCDの良さがあるなぁ」ということ。「久しぶりにCDを聴いてガッカリするかも」という危惧もありましたが、全くの杞憂でした。確かにスペック的にはDSDやPCMハイレゾファイルの方が優れているし、オーディオ的にも面白いと思うけど、そのことと音楽を聴く楽しさってやはり別物ですね。むしろ“音”に囚われない分、CDの方が音楽を心地よく楽しめるのでないかとすら思ってしまいました。


そして今回の試聴でもう一つ感じたのは「Oracleにしてよかったなぁ」ということ。CDに感じた“良さ”って、やっぱりOracleによるところが大きいんですよね。ちなみにCDで物足りなく感じた解像力、緻密さ、空間情報の描写については、Oracleのクロック換装である程度対処できるのではないかと思っています。これは今後のお楽しみにとっておきましょう。


この結果を受け、今後もソフト購入はCDメインでいくことに決めました。聴きたいアルバムがあればDSDファイルを購入するけど、PCMハイレゾファイルはよほどのことが無い限り購入しないでしょう。無論、手持ちCDをリッピングするつもりもないので、PCオーディオはDSDファイル専用オーディオという位置づけになりますね。


なんか、気持ちがスッキリしたなぁ♪