memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

Luxman P-700uの感想

1週間のエージングを行った上での感想です。



まずは外観や操作性から。

  • 筐体はシッカリしていて高級感がある。底板も剛性感があって、CERAPUCの3点支持でもたわむ感じなどは全くない。
  • 肉厚アルミのフロントパネルも好印象だが、金色のエンブレムは大きすぎかなと。
  • ベッドサイドの頭の直ぐ横に設置しているため、照明を消した状態だとLEDが明るすぎる。これはLEDの上にアルミ箔を貼り、針で小さな穴を開けることで対策済み。
  • 質感等はとても良いのだが、いくら高さが薄いとは言え、面積(縦横)がデカすぎるし重すぎる。
  • アンバランス出力が2つついているので、そのうち一つをアクティブスピーカー専用(常時接続)にできるため有り難い。
  • バランス出力端子にはロックがついていないが、保持力はかなり強いので特に問題はなさそう。
  • ボリュームノブはそれなりにスムーズではあるけど、トルクのかかり方が一本調子で粘りが無い。本体価格を考えるとフィーリングにもう少し高級感が欲しいところ。
  • 感度切り替え(0dB, -6dB, -12dB)は意外に便利。ヘッドフォンによって使い分けるというよりも、 RCA入力とXLR入力を切り替える際の音量合わせに使っている。(XLR入力の方がRCA入力より6dB音量が高くなるため)
  • 電子制御アッテネーターLECUAの機構上、感度切り替えによる音質変化は生じないはずだが、確かに感じられない。結構すごいことかも。
  • 入力や感度などを切り替える際のリレーの動作音はビックリするくらい大きい。“カチャカチャ”ではなく、“ズコココココン”みたいな。
  • 持っているバランスケーブルが全て2番HOT-3番HOTのクロスになっているので、バランス入力の極性切り替えがついているのは有り難い。
  • T1使用時のボリューム位置(感度0dB)が10時〜11時くらいなので、低能率のヘッドフォンでも問題なく音量がとれる。
  • 外さなければならないネジが多いのでまだ内部を見ていないが、Luxmanのサイトの写真を見る限りヒューズは5本使用している模様。これはいずれ交換するかな。


次に音について。P-700u導入前に使用していたアンプがGrace Design m903ですので、基本的にはm903との比較感想となります。


<機器構成>

iPod Classic + iD100  <− エーワイ電子外部電源(AET SIN AC)

|wireworld GSV5(AES/EBU)

M1 DACNBS Statement AC)

|wireworld super eclipse5(XLR)

P-700u(NBS Statement AC)


※全ての電源はAIT-160TWより給電

  • m903は業務用らしくニュートラル〜僅かにクールな温度感でフラットなバランスだったが、P-700uは少し暖色系で中低域に厚みのある音。
  • 音は滑らかで、繊細で、上質。情報量も多いし、解像力も高い。
  • ただ、エッジのシャープさ(アタック音における高域の強調感)がさほど強くないため、(良くも悪くもだけど)どんな音も耳あたり良く聞こえてしまう。
  • 周波数バランス的に高域がやや抑えめに思えるが、そのせいか、CD(特に古いCD)によっては高域が少し詰まった(曇った)ように感じることがある。逆に(高域成分がきっちり入った)録音の良いCDだと、実に素晴らしく聞こえる。
  • m903よりも余裕のある鳴り方をする。音量を上げても破綻しそうな兆候は微塵も感じない。
  • 結果として、T1の鳴り方がかなり変わった。以前は、線は細いが精密な音像が少し遠めに展開し、温度感もややクール寄りのために客観的でモニターライクな鳴り方だったのが、P-700uだと音の勢いが増して線も幾分太くなり、音像との距離も縮まったこともあって、総じてエモーショナルな音になった。
  • Edition8の方はまだ一度しか聞いていないので感想は後日としたいが、その時はm903でもそうだった“耳の近くで切れの良い音をドンシャリ的に鳴らす傾向”がさらに強まって、少しゴチャゴチャしているように感じた。m903の時はE8の方が気持ちよく音楽を聞くことができたのだが、P-700uにはT1の方が合っているかもしれない。
  • 使用しているケーブル自体が違うので飽くまで推測だが、アンバランス入力よりもバランス入力の方が、少しレンジが広く音の分離感が良いように感じた。


最後にバランス駆動とアンバランス駆動の比較について。アンバランス出力についてはT1のバランス端子に変換プラグをつけた状態での試聴なので、ノーマルのT1で試聴するのとは若干結果が違うかもしれません。

  • バランス駆動のヘッドフォンを聞くのは初めてであり、正直かなりの期待感を持っていたが、実際に聞いてみると想像していた程の違いはなかった。ちょっと肩すかしを食らった感じだが、過剰な期待を持ちすぎた私が悪いのだと思う。
  • とは言え、やはり多少の違いはあって、音の分離が良くて、空気感が多少強く感じられる。
  • 写真に例えると、「ぱっと見ピントが合っているように見えるが、拡大してみたら微妙にピントがずれている写真」がアンバランス駆動で、「拡大してもジャスピンの写真」がバランス駆動。構図も絞りもシャッタースピードも同じだと、ぱっと見どこが違うのかがわかりにくいのだけれど、ジャスピンの写真の方が画が締まって空気感もうまく表現できている。そんな感じの差である。言い換えるなら、僅かな滲みが無くなるということなのかもしれない。尤もこの差をもって「大きな違い」と考えるか、「大した違いではない」と考えるかは、聞く人の価値観次第。
  • あとは、バランス駆動だと音量を上げても音がゴチャゴチャになりにくいかな。
  • 楽器の定位感やサウンドステージの大きさが変わるかと思っていたけど、多少定位が明確になった気はするがアンバランス駆動との大きな差は感じない。
  • 比較するならバランス駆動の方が良いと思う。そう思わせるだけの差はある。でも、バランス駆動でなければならないとは思わない。
  • 私自身はといえば、期待していたほどの違いはなかったけど、バランス駆動にして良かったと思う。
  • 駆動方式による差異については使用するヘッドフォンによって結果が異なると思うので、T1以外でも試してみたい。でもE8の改造には二の足を踏んでしまうなぁ...。


以上、3つの観点からレビューしてみました。


バランス駆動云々よりも、アンプをm903からP-700uに変えた効果の方が圧倒的に大きかったですね。T1の鳴り方がこんなに変わるとは思いませんでした。
P-700uの導入により音のクオリティ自体は底上げできたと思いますが、新しい要因が入った故に全体としての調和(バランス)は崩れるわけで...。


現時点での課題は「高域のバランスをもう少し強めて、エッジ感やシャープさを出すこと」です。ただしまだ十分に試聴していないEdition8との兼ね合いもあるので(T1とE8の両方をうまく鳴らしたい)、まずはE8の試聴をしてからですね。理想的には完全に同じシステムでヘッドフォンだけを使い分けたいと思っていますが、それが難しい場合は、例えば

  • ルート1:(iD100)→AES/EBU→(M1 DAC)→バランスケーブル→(P-700u)→バランス駆動→T1
  • ルート2:(iD100)→SPDIF(同軸)→(M1 DAC)→アンバランスケーブル→(P-700u)→アンバランス駆動→E8


という形で音声ケーブル(ルート)を完全に分けるのもアリかなと思っています。これならそれぞれのヘッドフォンに合わせてケーブルチューニングできますしね。


今後トライするかもしれない施策は次の通り。

  1. デジタルケーブルおよびインターコネクトケーブルの見直し
  2. 電源ケーブルの見直し
  3. T1のXLRコネクタをオヤイデのFocus1に交換(シルバー&ロジウムメッキによる高域強化)
  4. P-700uのヒューズを交換(5本交換すると高くつくけどIsoCleanが有力)
  5. P-700uの下にオーディオボードを敷く
  6. P-700uのインシュレーターの検討(CERAPUC→?)
  7. M1 DACのインシュレーターの検討(今は標準の足のまま)、もしくはDAC(実は気になる機種を見つけました)の買い替え

書き出してみると結構いろいろあるなぁ...。
とりあえずお金がかからない1と2から取りかかりましょう。