memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

TL3N用スタビライザー STB-1

先日衝動買いしたブツの正体は、Airbowから新発売されたCECベルトドライブCDトランスポート/CDプレーヤー用のスタビライザーです。純正品との完全互換で、2本のゴムリングがついていて音質調整が可能という点に興味を惹かれました。


開封後、まずは重量を計測してみたところ、純正品の354gに対して、STB-1は本体が350g、ゴムリング2本が3gなので、ゴムリング2本を装着した状態での重量は純正品とほぼ同じです。直径7cm、厚み1cmと大きさも同じですが、構造が異なるので慣性モーメントは多少異なると思います。


ローゼンクランツからSTB-1という同じ名前のCEC用のCDスタビライザーが発売されていますが、そちらは直径が105mm、厚さ5.7mm、重量400gなのでAirbow製とは別物。価格も39,900円とAirbow製の2倍以上します。
ただ仕上げは似ているし逸品館とローゼンクランツはつながりが強いので、Airbow製はローゼンクランツが製作しているのかもしれません。仮にそうだとしても、スペックも価格も異なるのに何故STB-1という同じ製品名にしたのかは不可解ですね。



箱は段ボールにシール貼りの(良く言えば)エコ仕様。



左がSTB-1で右が純正品。STB-1にはブラッククロムメッキ処理が施してあります。



外周にオプションリング用の2本の溝がついています。




こちらは裏側。純正品は外周にある(多分)フェルトリングと内周のローレット状リングの2カ所でCDを押さえる構造になっているのに対し、STB-1は内周にある6カ所のポイント(直径3.5mm位)だけでCDを押さえる構造です。故にCDディスクをダンプする力は純正品の方が強いでしょう。逆に言えば純正スタビ自体は響きにくく、STB-1の方が響きやすい構造になっているといえます。
なお6カ所のポイントは同一円周上には配置されてはおらず、直径の異なる2つの円周上に交互に配置されています。結果として線対称(反射対称)となっていますが、同一円周上に配置しなかったのは共振対策なのかもしれません。



オレンジの2個のゴムリング(直径約6.5cm)が付属品。下側の黒いのは自宅にあった輪ゴム。パースの関係で同じような大きさに見えますが、実際には黒の輪ゴムは直径約5cmでオレンジのリングよりも小さいです。



付属のリングをつけた状態。



自宅にあった輪ゴムをつけた状態。


製品紹介はこのくらいにして、肝心の音についての感想を書き留めておきましょう。

  • 付属リング無しの状態だと明らかに響きが増え、その分音場が少し広がって開放感のある音に。音調も少し華やかさを増す感じ。一方で響きが増える影響なのか音像が少し不鮮明になり、この点がやや問題。
  • リングを2本つけると、今度は響きが抑えられて音像は精緻になるが、先の開放感は消えて逆に閉塞感のある音に。
  • リング1本だと中間的な音になるのだが、まだ閉塞感を引きずっているような気がする。


この3つの使い方の中ではリング無しが一番好みではあるのですが、楽器の数が多い楽曲だと音がゴチャゴチャした感じになってしまうのがどうにも気に入りません。
付属のリングは締め付けが割ときついので制振が効き過ぎているような気がします。そこでもう少し緩いものがないかと自宅を探して見つけたのが先の黒い輪ゴム。富山名産・鱒の寿司についていた輪ゴムで、何かの役に立つかもしれないのでとっておいたものです。
この黒い輪ゴム、直径は付属リングより小さいもののよく伸びるので、結果としての締め付け(制振効果)は付属リングよりも緩い状態になります。


試してみるとこれがドンピシャで、リング無し状態と付属リング1本装着状態のちょうど中間くらいの感じになりました。この音を純正スタビと比較してみると、

  1. 響きが少し増して音調が僅かに華やかに(明るく)なる。
  2. 音の広がり感(スケール感)が少し大きくなる。
  3. アタック音が少し柔らかい感触になる。
  4. 音像が僅かに曖昧になる。


これをどう評価するかは人によってかなり異なると思いますが、私個人としては1と2の効果が4のデメリットを上回っていると判断しました。3はソースによって一長一短なので、総合的には純正スタビよりも好ましい音に変化したと感じます。


しかしながら純正スタビの音が悪いとは決して思いません。STB-1(黒い輪ゴム装着)とどちらの音がニュートラルに近いかと言われると、やはり純正スタビの方でしょう。
STB-1は良くも悪くも音を変えます。勿論アクセサリーというやつは効果の差はあれ音を変えてしまう存在なわけですが(でなければ存在する意義がない)、STB-1は“CD本来の音を引き出す”というよりは、むしろ“音を好みの方向に積極的に変えて楽しむ”ためのアクセサリーなのではないかと思います。


多くのアクセサリーは“本来あるべき理想的な信号伝達の実現”を目指しているような気がしますし、そのような“理想主義的”な考え方は(私を含め)多くのオーディオファイルにとって受け入れられやすいと思います。
そしてそうであるが故に、“音を積極的に変えて楽しむ”というSTB-1のような“演出的”方向性に対しては本質的に好ましく思わない方も多いでしょう。結果としての“音の変化”が仮に同じであったとしても...ね。
(注:これはあくまで私個人の感想ですので誤解なきよう。逸品館さんは「音質アップ」を訴求されています。)


私自身についていえば、“本来あるべき理想的な信号伝達の実現”という理想主義的アプローチは勿論welcomeですが、“積極的に音を変えて楽しむ”という演出的アプローチもOKです。要するに“結果としての音さえ良ければ全て良し”ということです。
故に所謂オカルト系アクセサリーでもOKですが、音が変わる作用原理に納得感のないアクセサリーはそもそも選ばない(不安の方が大きすぎて投資に至らない)ので、(試聴でもしない限り)実際に導入することはほとんどありませんけどね。


なんだか話が逸れてしまったので元に戻しますが、クラシック、ジャズボーカル、一部POPSにはSTB-1が、プログレやメタル等のROCKには純正スタビの方が良さそうなので、聴くCDによって使い分けることにしました。スタビライザーの場合、ケーブルやインシュレーター等のアクセサリーと違って使い分けることは簡単ですから。


CECのベルトドライブをお使いの方全てにはお薦めしません。でも間違いなく音は変わりますので、面白そうだと思った方は試してみては如何でしょうか。


・Airbow STB-1
・ローゼンクランツ STB-1