memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

Steve Jobs氏 死去の報を受け...(T.T)

最初に見たMacintoshはIIci+Portrait Displayでした。確かうちの会社がキャノンマーケティングジャパン(当時のアップル製品の日本総発売元)に対してMacintoshの販促提案を行うために購入したもので、PageMakerで企画書を作成するとのことでした。
その当時はまだワープロ専用機で企画書を作成していた時代なので、担当者がMacintoshで企画書を作る様子を見ていてもの凄くショックを受けたのを今でも鮮明に憶えています。
筐体デザインのかっこよさもさることながら(ちなみにPortrait Displayって画面が縦長なのです)、“文字や図形が画面上で自由に作成/レイアウトでき、しかもフォントや文字サイズも自由に変えられる”ということが一番の衝撃でした。


実は私の卒論は“大型計算機用の日本語清書プログラム(後のワープロソフト)で入力したデータを研究室にあるミニコンで出力(印刷)するためのプログラムを作成すること”だったのですが、当時は1頁の中の“行×列”空間に文字データを順次配置するという考え方なので、文字が印字できる位置は予め決まっているわけです。後のワープロ専用機も基本的には同じ考え方なので、Macintoshだとマウスを使って画面上の任意の位置に文字や図形を配置できるというのはまさに青天の霹靂だったのです。
その時“Apple Macintosh=次元が異なる先進的なマシン”という刷り込みが強烈になされました。


以来、私にとってMacintoshは憧れの存在となりましたが、価格が価格だけに高嶺の花でした。それでもずっと欲しいと思い続けていて、93年にQuadra840AVが発売された時、AV機能がついているという先進性に自分の中の何かの箍が外れてしまい、後先考えずに注文してしまいました。無論、先立つものは無かったのでローンを組む羽目になりましたが...(^_^;
その後、PowerMacintosh8100(840AVからのアップグレード)、PowerMacG4と進み、仕事の都合でWindowsに転んでしまってしばらくの間VAIOノートを使っていましたが、Intelチップの搭載によりネイティブでWindowsが走るようになったころから再びmacへの思いが募りだし、2009年にMacbookProを購入し、ようやくmac環境に戻ることができました。


MacbookProを使った時に思ったのは、ソフトとハードが一つの思想でデザインされていることの素晴らしさ、そしてその完成度の高さ、とりわけインターフェイスデザインの秀逸さでした。“素晴らしいユーザー体験の提供”、これこそがスティーブ・ジョブズの追い求めたものであり、それが(おそらくは必然的に)パーソナルコンピューターという枠を超え、iTunesiPodiPhone、そしてiPadと広がっていったのはご承知の通りです。
ジョブスが経営者として優秀であったかどうかについては個人的には微妙だと思いますが、ビジョナリストとしては間違いなく比類無き才能を持った人だったと思います(過去形で書かなければならないのが悲しい限り)。そしてそのビジョンが人々に受け入れられた結果が、今のAppleだと思うのです。
結果論として、ジョブスが戻ってきてからのAppleは見事な再生を遂げ、今や現金保有残高でアメリカ政府を上回るというとんでもない成功を収めたわけですが、ジョブス本人は“昔も今も、ひたすら自分の理想(ビジョン)を実現しようとしただけ”だったのではないかと思います。


私にとって“神”と呼べる存在はアルベルト・アインシュタインですが、“憧れ”の存在はジョブズです(でした)。
アインシュタインは天才だったと思うので私にはその足下にさえ近づくことはできませんが、ジョブズは優れたビジョナリストではあったけれども天才ではなかったと思うので、そのビジョンの持ち方や生き方を真似することはできると思っています。その意味で、ジョブズは私にとって常に注目の的であり、次に何をしでかしてくれるのかワクワクしながら見てきたのですが、もうその愉しみを享受することができないかと思うと残念でなりません。


一昨日の夜に自宅でiPadを使っていたところ衝動的にiPad2が欲しくなり、昨日の会社帰りに雨の中タクシーを飛ばして有楽町ビックカメラに行って16GB・Wi-Fiモデル黒色(運良く1台だけ在庫があった)を購入してしまったのは、今日になって思うとちょっと不思議な感じがしています。別に昨日買わなくても良かったのですが、どうしても直ぐに手に入れたくなってしまったんですよね。


またジョブズの死が、残念だった(iPhone5ではなかったので多分みんながガッカリした)iPhone4Sの発表の翌日だったというのも、何やらジョブズの最後のプレゼンテーション(パフォーマンス)だった気がします。
昨日の時点ではiPhone4Sはパスしよう(iPhone5を待とう)と決めていたのですが、ジョブズの最後の作品になるので(哀悼の意を込めて)買い替えることにしましたから...。


享年56歳。あと15年くらい現役を続け、もう1〜2回くらいは世の中の枠組みを変えるような大仕事をできたのではないかと考えると、あまりにも早すぎる死でした。
遠い異国の地からではありますが、心よりご冥福をお祈りいたします。(合掌)




自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから。” Think different. “