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audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

K.Racing Audio Design / Device1SEの試聴

UX-1用の電源ケーブルとして試聴をお願いしたのはK.Racing Audio DesignさんのDevice1SEとDevice1です。

UX-1とWadia521の電源ケーブルを両方とも交換した時の音を聴いてみたかったので、(SEを2本借りるのは悪いかなと思ったため)無印とSE各1本ずつの貸し出しをお願いしたのですが、ご厚意によってSE2本と無印1本の計3本をお送りいただくことに! とは言うものの、元もと興味があったのはSEの方なので、今回はSEのみ試聴しました。



電源ケーブル交換のターゲットは以下の3機種。現時点での機器と電源ケーブルの対応は以下の通りとなります。


UX-1:NBS ProfessionalIII
OCX:AET SIN AC
Wadia521:NBS BlackLabel II


なおPL-LにはJPS Labs Digital ACの方を使用しました。


まずは今回の試聴のメインターゲットであるUX-1にインストールしてみます。


・響きの成分がやや増加しサウンドステージが少し広がった感じに
・情報量、解像度は若干アップしている
・楽器の分離感はとても良い
・音抜けが良く、心持ち音が伸び伸びとした感じに
・高域から低域までのレンジ感は非常に広い
・ウォーム感が後退しニュートラルな感じに
・ボーカルの歯擦音がやや強調される
・音の力感が僅かに軽くなる
・陰影感がやや後退し、音の色合いが薄くなる


総合的な印象としては、Device1SEは「レンジが広く情報量・解像度ともに高水準で、とてもニュートラル(色づけがほとんど無い)なケーブル」だと思いました。
NBS ProfessionalIIIとの比較では、情報量や解像度といったオーディオ的な性能はDevice1SEの方が上だと思いますが、音色や陰影感といった表現に関してはNBSの方が好みです。フィギュアスケートにたとえるなら、技術点はSEの方が高く、芸術点はNBSの方が高いという感じですね。


今回の主目的故にかなり長い時間をかけ、何度も何度もケーブルを入れ替えて試聴しましたが、それぞれの良さの領域が違う(技術 vs 芸術)こと、またお互いに決定的なマイナス要素があるわけでもないことから、どちらが望ましいかという判断を下すまでには至りませんでした。(好きなのはProfessionalIIIの音の方ですが、将来を考えた時にその選択が望ましいのかどうかという判断が下せなかったということです。)
そんなわけで、とりあえず結論は保留にして次のステップに進むことにしたのですが、実のところSEの圧勝になるかと思っていたのでProfessionalIIIが予想外に健闘したという印象が強く残りました。


次なるターゲットはWadia521です。UX-1はProfessionalIIIに戻し、Wadia521にSEをインストールして試聴再開。
結論は比較的短時間で出ました。技術点は大差ないけれど、芸術点はNBS BlackLabel IIがかなり上回っています。SEだと音の色気みたいなものが薄まってしまって物足りません。まあ元がWadia+NBSの組み合わせなので然もありなんという感じです。


この時点でほぼ予想はできたものの、念のためUX-1とWadia521ともにSEに交換して聞いてみましたが、Wadia521の時の印象がさらに強まった感じです。私の頭の中にある“ハイエンドな音”をある意味体現するような音で、きっとこちらの音の方が好きという方は多いのではないでしょうか。若い頃の私だったらこちらを選んだかもしれないなと思いましたが、残念ながら今の私が求めている音ではありませんでした。


最後にAntelope OCXにインストールしてみましたが、こちらはUX-1にインストールした時の印象に似通っていました。AET SIN AC、Device1SEともに良さがあり、一概にどちらが良いとは言い難いです。


金曜の夜から日曜の夜にかけ、都合3日間にわたって試聴をしましたが、結論を出すまでには正直かなり迷いました。
基本性能が非常に高いケーブルであることは間違いありません。でもその音の肌合いが今の私にはちょっと合わないというのも動かしようのない事実。それでも、それを承知でUX-1にSEを挿し、あとは他で調整するという線があるのではないかということが悩みの中心でした。やっぱりUX-1には基本性能が高いケーブルをあてがった方が良いのではないかという思いが私を悩ませたわけです。


ゼロの状態でSEかNBS ProfessionalIIIのどちらかを購入するのであれば間違いなくSEを選んだと思います。あるいはSEとProfessionalIIIとの差がもっと大きければ(技術点に開きがあれば)それはそれで悩まなかったとも思います。
しかしながらProfessionalIIIが技術点でも予想外に健闘し、そのProfessionalIIIが既に手元にあるというのが現在の姿。この状態で、決して安くはない投資をしてまでSEを手に入れたいかというと、やっぱりそこまでは...。


というわけで、今回の導入は見送ることにしました。


K.Racing Audio Design様には申し訳ないという思いで一杯ではありますが、快く試聴ケーブルを貸し出していただきありがとうございました。心より感謝の意を表したいと思います。


【おまけ1】
実は、新たにUX-1用の電源ケーブルを購入した場合、ProfessionalIIIをどうするか(どこに使うか)ということも課題として意識していました。そこで、試聴が終わった後、今後の参考のためにパワーアンプ以外の全ての機器の電源供給元となっているPowerBank8への電源供給ケーブルにProfessionalIIIを使い、それまで使用していたCARDAS GoldenReferenceをUX-1に使ってみるという実験をしてみました。
するとこれが結構良い感じなのです。CARDAS GoldenReferenceはデジタル機器との相性が悪い(特に高域の伸びが悪くなる)というのが私なりの経験則だったのですが、UX-1に使ってみたところ(かなり以前に使ってみた時にはイマイチだったという記憶があるのですが)全くそんなことはありませんでした。むしろCardas独特のウォーム感と柔らかさが良い塩梅で付加され、私好みの音になります。流石に情報量や解像度に関しては少し後退してしまうのですが、トータルで考えるとこれはこれで有りかもしれないと思いました。
これまでは、音の入り口であるUX-1に関しては情報量や解像度といったオーディオ的スペックを高める方針でやってきましたが(Device1SEをお借りしたのもそれ故ですが)、そもそもその方針自体が間違っていたのかもしれません。もう少し視野を広げ、オーディオ的なスペックは頭の隅に置きつつも、より自分の好みにあった音楽表現をしてくれるケーブルを探した方が良いような気がしてきました。
その意味では、UX-1の電源ケーブルはCARDAS GoldenReferenceでいける可能性も出てきたので、次なる電源ケーブル探しはUX-1とPL-Lを両睨みして検討しようと思います。


【おまけ2】
今回の目的はUX-1の電源ケーブル探しだったわけですが、せっかくSEを2本もお借りしたので、ヘッドフォンオーディオシステム(今回のヘッドフォンにはEdition8を使用)にも使用してみました。メインシステム以上に情報量や解像度を強く意識したシステム故にDevice1SEは合うのではないかと予想していたのですが、結果は予想以上でした!
m903とM1 DACの両方にSEをインストールした音は、凄まじい情報量と分解能です!ピアノのタッチが全く別物となり、ホールの残響音は増え、ボーカルや弦楽器の細かな音の表情まで微に入り細に入り表現してしまいます。ここまで変わるか!?というくらいの変化です。
ところが不思議なことにSEを1本だけにしてしまうと、この凄さが半分ではなくて1/3くらいになってしまうんですよね。メインシステムでの試聴の際にも思いましたが、このDevice1というケーブルは複数本同時に使用すると効果が“加算”ではなく“乗算”されて出てくるような気がします。
幸か不幸か現在の課題は飽くまでメインシステムの方なので、今ヘッドフォンオーディオシステム用のケーブルに投資するわけにはいきませんが、メインシステムの音作りが落ち着いてヘッドフォンオーディオシステムに再投資する余力ができた暁には、ぜひ手に入れたいと思わせるような音でした。