- 作者: 古野まほろ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/04/08
- メディア: 新書
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美少女陰陽師 対 怨霊!新時代青春ミステリの扉が今開く!!
『天帝』シリーズの古野まほろ待望の新作登場!!私は人殺しだから――。過去の過ちのため帝都から逃げるように転校した水里(みなざと)あかね。彼女を待っていたのは、南国・実予の陽光と、謎めいた美少女・小諸るいかだった。周囲の温かい歓迎に心癒されたかに見えたあかねの目の前で、不可解な爆発&転落事件が。超絶推理で犯行を解明し、陰陽の力で事件に潜む怨霊の姿を暴き出す小諸(コモ)。論理と因果と美を兼ね備えた最強の陰陽師探偵登場!!
【評価】★★★★☆
「天帝」シリーズと同じ世界観。舞台は“実予”となっていますが松山市のことですね。“坊ちゃん”の小説に登場する“住田温泉”(道後温泉本館)やら“団子”やら“ぞなもし”のオンパレードですから。
「天帝」シリーズに比べるとストーリー的にも情報量的にも“ライト”なので圧倒的に読みやすく(理解しやすく)はありますが、それでもすんなり読ませてはくれないところが良くも悪くも古野さんらしいところ。“ぞなもし”(実予弁=伊予弁)に慣れるのに暫くの時が必要でした。(^^ゞ
第1章と第2章の間に「そして彼女も、物語に侵入する」というパートがあるのですが、クラシックやら楽器やら“果実”やらの記述があることから「天帝」シリーズと関係性を匂わせます。そしてクライマックスで主人公の1人、陰陽師“コモ(小諸るいか)”が怨霊を調伏する際の『巨柱のような金色の大尾が。幾つもの剛尾が。コモを起点に大蛇のごとく輾転ち、許されざるものどもを薙ぎ払い掃き潰し叩き壊す。』という記述、さらにはコモからは“果実”の香りがするなどと書かれていること等を考えると、“美少女陰陽師コモ(小諸るいか)”=“「天帝」シリーズの妖狐(=上巣由香里)”?...とも考えられるのですが、だとすると調伏される側の“妖狐”が調伏する側の“陰陽師”であるところが“?”。
と思って「天帝のはしたなき果実」を必死に捲ってみると、『大妖のちからとはすなわち、この世のひとの望みを読解し、その願望を化現せしむるちから−読心と幻覚作用。修野の女は巫女(テレパス)であり宿曜師(フォーチュンテラー)であり陰陽師(ソーサラー)だったんです』という記述があることで納得。由香里は裏の血筋だけど“陰陽師”であってもおかしくないのかぁ。
「本格探偵小説のためのエチュード」という副題通り、謎解き的にはわりと軽めでミステリー作品としては★2.5くらいですが、登場人物が魅力的なことと「天帝」シリーズとの関係性を評価し、おまけして★4つです。