memento

audio&visual, headphone&earphone, bicycle, music, animation, book, wine...趣味領域の外部記憶装置です。 <since 10 aug 2006>

進化したSIN


AET SIN DG 75 EVOをエージング約50時間時点で聴いてみました。
構成はSIN DGが音声デジタルケーブル(DAC64との接続にPADのRCA-BNC変換プラグを使用)、UR DGがクロックケーブルです。


SIN DGの音の印象を象徴的に表現すると“ナチュラルな精密さ”。
UR DGは“精密”で“生真面目”な感じですが、SIN DGは“精密”で基本的には“真面目”なんだけど多少の“柔軟さ”も備えたという感じでしょうか。やや“artificialな精密さ”のUR DGに対し、“naturalな精密さ”のSIN DG。
ただし残念なことに“しなやかな精密さ”とまではいかない。やっぱりまだ“固さ”が見え隠れします。テクスチャーにウェットさがなく、基本的にドライだという点も関係してるかなぁ。KS-2020やDB510だと若干のウェットさがあるのですが、SIN DGにはそれがない。とは言えUR DG程ではありませんが。
先日も触れましたが、この音の傾向はSIN ACのベクトルと同じように感じます。ただしSIN ACの方がSIN DGよりも若干“しなやかさ”寄りではあるかなぁ。


KS-2020の場合、あたかも音の粒子が漂っているのが見えるようなフワッとした空気感を表現しますが、SIN DGの場合そのフワッとした空気感はあまり感じません。ただし楽器が左右前後にきっちりと定位するのでサウンドステージは明確に形成されています。大げさに言えば、“雰囲気”で空間を表現するKS-2020に対し、“音”で空間を表現するSIN DGという感じでしょうか...。KS-2020は作為的な空間だけどSIN DGの場合はナチュラルな空間だとも言えます。
その他の感想として、曲によってではありますが、「音が微妙に小さくなった」「静けさがやや増した」「ボーカルが若干小さくなった反面、やや奥に引っ込んだ」「左右はそれ程でもないが奥行きが深くなった」といったメモ書きもしていますが、SIN DGの特徴とまで言い切れるかどうかは分かりません。



一部否定的な言葉を並べてしまいましたが、実はこのSIN DGというケーブル、大変気に入りました。(^^)v  ただ基本能力が凄く高いケーブルだけに、“あともうちょっと”という気持ち(欲)が出てしまうんですねぇ。(^_^;
SIN DGと同時にKS-2020とDB510も聴いたのですが、SIN DGに比較するとこの2本は良くも悪くも個性的。とても特徴的な良い点の裏には明確な欠点も存在しています。例えば、KS-2020の場合は音の実体感の弱さだし、DB510の場合は情報量の物足りなさ。それに対してSIN DGは非常にバランスが良くって、明確な欠点というものをあまり感じません。
尤も個人的な好みからいうともう少し艶を表現できないかなぁと感じるわけですが、私の好み自体が標準領域からはみ出しているのでこれをSIN DGのせいにするのは間違っているのでしょう。


改めて感想をまとめると、SIN DGはUR DGの精密さにナチュラルさを加えた、基本能力の高い非常によいデジタルケーブルだと思います。突出した個性はありませんが、全てが高水準である点が個性だと言えなくもありません。何をもって標準点だと突っ込まれると困るのですが、イメージ的には“標準原器”とでも言いたいくらいです。
それと上では書きませんでしたが、シンバルやハイハットの音の響きが非常に繊細で綺麗です。この繊細さはこれまで表現できてなかったなぁと気がつきました。
なお「このケーブルのプラグは非常に硬いため、弱い端子のコンポと接続した場合端子を破損する恐れがありますのでご注意下さいませ。」という注意書きがありましたが、UX-1、PADおよびオーディオテクニカの変換プラグでの使用について特に問題は感じませんでした。NBSRCAプラグの方がよっぽど固くて抜き差しが大変です。


ちなみにオーディオテクニカRCA-BNC変換プラグを2個使用してクロックケーブルとしても使用してみたのですが、呆気なくロックしました。
UR DGとSIN DGを入れ替えてみたときの音ですが、入れ替える前と基本的には同傾向。敢えて言うならば音声デジタルケーブルとして使用した方の特徴がやや強く出る感じだったので、SIN DGは音声デジタルケーブルとして使用することにします。余計な変換プラグを使用しなくても良いという精神衛生上のメリットもありますしね。
その他にも幾つかの組み合わせを試してみたのですが、捨てがたいなぁと思ったのはクロック:SIN DG、音声:KS-2020の組み合わせと、クロック:DB510、音声:SIN DGの組み合わせ。前者はKS-2020の良さがさらに際だつ感じで、後者はSIN DGに艶っぽさが加わる感じ。ただし前者だと実体感が、後者だと音の精密さが若干後退するというデメリットもあるので採用には至らず。


今後の課題は今の音に艶っぽさを付加することなのですが、P8 PowerbankのコンセントをULTIMO XXXに交換することで解決できるかも知れません。でもそれはあとのお楽しみということにして、しばらくは今の状態で聴こうと思っています。